高度専門職ビザの改正
✤ 高度専門職ビザでは、2017年4月26日よりポイント基準と永住要件についての改正が行われたことにより、今後、高度専門職ビザを取得するかたや、永住を早期に取得するかたが多くなると予想されます。
まず、1つ目が高度専門職(高度人材外国人)の方の永住許可要件の緩和です。永住許可を受けるためには原則10年以上の在留(10年のうち就労期間で5年以上)が要求されていましすが、高度専門職(高度人材外国人)の方であれば3年または1年(ポイントが80点以上の方)の在留期間で永住許可要件を満たすとする永住要件の基準緩和がなされました(2017年4月26日より)。
具体的には以下のような基準となります。
永住許可要件3年の基準
☀3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること(高度人材外国人・高度専門職の方以外でも、たとえば技術・人文知識・国際業務のビザをお持ちの方が、3年前の時点におけるポイント計算で70点以上あれば、永住の要件を満たすことになります。すなわちこの場合、3年前の時点と、現時点で70点以上が必要という解釈になります)。
※なお、上記の70点というポイントの計算は、ポイント基準の改正前のものではなく、改正後の新しい現時点でのポイントの基準で計算します。。
永住許可要件1年の基準
☀1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること(高度人材外国人・高度専門職の方以外でも、たとえば技術・人文知識・国際業務のビザをお持ちの方が、1年前の時点におけるポイント計算で80点以上あれば永住の要件を満たすことになります。すなわちこの場合、1年前の時点と、現時点で80点以上が必要という解釈になります)。
※なお、上記の80点というポイントの計算は、ポイント基準の改正前のものではなく、改正後の新しい現時点でのポイントの基準で計算します。。
ポイント基準の改正
✤ 高度専門職の改正についての2つ目が、そのポイント基準の改正です。新たな加算ポイントの基準を設けることでポイントが取得しやすくなりました。
どのような加算ポイントの基準が改正によって加わるか以下で説明していきます。大まかにいうと「学歴のポイント基準改正」、「日本語能力の加算ポイント追加」、「トップ大学卒業者の加算ポイント追加」が挙げられます。
学歴のポイント基準改正
学歴のポイント基準の改正では、複数の学位を2以上保有している方には5ポイントを獲得できるようにしています。また、研究分野の高度専門職の方はいままでは博士・修士をのぞく大学卒業者(学士)の方にはポイントがありませんでしたが、改正後は10ポイントを獲得できるようになります。
以下で見てみましょう。赤字の部分が改正によって追加される基準です。現行よりもポイント獲得に有利となっています。
研究分野
学歴 | ポイント |
①博士の学位 | 30 |
②修士または専門職学位 ※①の該当者を除く |
20 |
③大学を卒業または同等以上の教育 ※①・②の該当者を除く |
10 |
④博士、修士、専門職学位を2以上保有 ※複数の分野 |
5 |
人文・自然科学
学歴 | ポイント |
①博士の学位 | 30 |
②経営の専門職学位(MBA・MOT) ※①の該当者を除く |
25 |
③修士または専門職学位 ※①・②の該当者を除く |
20 |
大学卒業またはこれと同等以上 ※①・②・③の該当者を除く |
10 |
博士、修士、専門職学位を2以上保有 ※複数の分野 |
5 |
経営分野
学歴 | ポイント |
①経営の専門職学位(MBA・MOT) | 25 |
②博士、修士、専門職学位を保有 ※①の該当者を除く |
20 |
大学卒業またはこれと同等以上 ※①・②の該当者を除く |
10 |
博士、修士、専門職学位を2以上保有 ※複数の分野 |
5 |
日本語能力に関する加算ポイント
日本語能力に関する加算ポイントについては、現行では日本語能力試験N1取得者または日本語を専攻して外国の大学卒業者に15ポイントが取得できるようになっていますが、改正後は、日本語能力試験N2取得者にも10ポイント取得のチャンスが与えられることになります。この10ポイントは非常に大きく、これは大きな改正ポイントだと思います。
以下は、すべての高度専門職の分野に共通した改正部分です。
現在のポイント基準
特別加算 | ポイント |
①日本の大学を卒業し、または大学院の課程を修了して学位を授与されている。 | 10 |
②幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験により証明(日本語能力試験N1合格相当)、または日本語を専攻して外国の大学を卒業している。 | 15 |
改正後のポイント基準
特別加算 | ポイント |
①日本の大学を卒業し、または大学院の課程を修了して学位を授与されている。 | 10 |
②日本語を専攻して外国の大学を卒業し、又は日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験により証明(日本語能力試験N1合格相当)。 |
15 |
③日常的な場面で使われる日本語を理解することができるほか、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる能力を有していることを試験により証明(日本語能力試験N2合格相当)。
※①・②の該当者を除く |
10 |
トップ大学卒業者の加算ポイント
改正により新たに加わる基準として、世界のトップ大学卒業者に10ポイントを加算するというものが加わります。これは非常に注目されるポイント基準になると思います。自分の卒業した大学が該当しているだけで10ポイントは大きい加算になるでしょう。
問題は、トップ大学とはどこの大学かという部分になりますが、基本的には世界の権威ある3つの大学ランキング評価において、そのうちの2つにおいて300位以内に入っているかが基準となりそうです。
以下は、すべての高度専門職の分野に共通した改正部分です。
改正後のポイント基準
特別加算 | ポイント |
①関係行政機関の長の意見を聴いた上で、法務大臣が告示をもって定める大学を卒業し、又はその大学院の課程を修了して学位を授与されたこと。 | 10 |
上記の改正基準だけでは、だいたいどの大学が加算対象の大学なのかが明確ではありませんが、具体的には以下のような大学となります。
法務大臣が告示をもって定める大学
大学 |
①世界の権威ある3つの大学ランキング(クアクアレリ・シモンズ社(英国),タイムズ社(英国)及び上海交通大学(中国)のもの)のうち2つ以上において300位以内に入っている大学 |
②文部科学省が実施するスーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型)において,補助金の交付を受けている大学 |
③外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において,「パートナー校」として指定を受けている大学 |
その他の加算ポイント
その他の加算ポイントとして、以下にいくつかをご紹介いたします。面白いものでは経営分野の高度専門職のポイントで、自ら1億円以上を投資していることというものがあります。
以下は、すべての高度専門職の分野に共通した改正部分です。
先端分野の従事者
特別加算 | ポイント |
①将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業として関係行政機関の長の意見を聴いた上で法務大臣が認める事業を担うものであること。 | 10 |
※ITなどの分野が想定されています。
国の機関等による研修修了者
特別加算 | ポイント |
①国または国から委託を受けた機関が実施する研修であって、法務大臣が告示をもって定めるものを修了したこと。 | 5 |
※イノベーティブ・アジア事業の一環として,外務省から委託を受けた独立行政法人国際協力機構(JICA)が本邦で実施する研修であって,研修期間が一年以上のものを対象としています。
1億円以上の高額投資家(経営分野)
特別加算 | ポイント |
①日本の公私の機関において、貿易、その他の事業の経営を行う場合にあっては、当該事業に自ら1億円以上を投資していること。 | 5 |